本展は太平洋戦争下の日系カナダ人の強制立ち退き、強制収容、財産没収、強制分散、そして国外追放政策を伝える展示 「Broken Promises」の日本巡回展です。同志社大学アメリカ研究所部門研究3「Transient Subjects/Unsettled Settlers」、および科学研究費補助金「出移民史を通じた次世代育成のための地域密着型バブリックヒストリーの構築 (基盤研究B:23K21810)」の助成を受けて実現しました。
「Broken Promises」は2014年から2022年にかけてカナダ連邦政府の社会人文科学研究会議 (SSHRC) の資金を得て行われた、日系カナダ人の戦時中の財産没収に関する学際的共同研究 「Landscapes of Injustice (不正義の風景)」の研究成果の一部として、カナダ日系人博物館が 2020年に制作しました。日本では展示の日本語と英語のバイリンガル版の巡回を 2023年11月から開始しました。これまでの開催地は、滋賀県平和祈念館 (2023.11~2024.2)、和歌山県三尾カナダミュージアム (2024.4~2024.6)、京都外国語大学 (2024.10) で、本展示は巡回展の第4弾となります。
日本巡回展示では、日本の研究成果に基づいて、カナダで制作されたバネル展示にご当地の日系カナダ移民関連資料を追加してきました。滋賀県平和祈念館では犬上郡開出今村から移民した松宮外次郎・増雄関連の資料を作成し、三尾カナダミュージアムでは、京都府立大学松田法子研究室の調査をもとに「三尾の民家建築とカナダ移民」の展示を同時開催しました。また、日本巡回展示実行委員会の研究チームが日系カナダ人関連の新たな地図などを作成し、日本の来館者にもわかりやすいように展示を補完してきました。
今回の同志社大学での展示には、これらの情報とともに、滋賀県や和歌山県からカナダへ移民した両親のもとに生まれ、戦後の国外追放政策で日本にやって来て、その後日本に定住したカナダ生まれの二世の方々のライフヒストリーと彼らにまつわる資料を展示しています。
今回の展示開催にあたっては、同志社高等学校社会科の歴史や人権に関する学習ブロジェクトと連携しました。同志社高校教諭が一名、カナダの共同研究ブロジェクトが主催した日系人収容所ツアーに参加し、また同志社高校では複数の大学教員による「バブリックヒストリー」関連の連続講義を開催しました。講義で習った方法を用いて同志社高校生がライフヒストリー調査を実施しました。高校生たちの力作をご覧ください。また、三尾村の調査を続けてきた京都外国語大学の学生が作成したパネルも展示には含まれています。
この展示が世界における多文化共生へのヒントを与え、日本の多様性に関する現状を考えるきっかけとなれば幸いです。
「Broken Promises-破られた約束」日本巡回展示実行委員会
和泉真澄 (同志社大学)、河上幸子 (京都外国語大学)、河原典史 (立命館大学)